パリの水事情:コーヒーと水の硬度について色々考えてみた
美味しいコーヒーに必要な条件を考えると、まず頭に浮かぶのは豆そのものの品質、焙煎度合い、淹れ方だったりしますが、忘れてはいけないのが「水」の存在です。一般的にはコーヒーには軟水が合うと言われていて、日本の水は軟水です。なので、日本でコーヒーを淹れるときにあまり水のことを意識したことが無かったのですが、欧州は思いっきり硬水なんですよね…。というわけで、美味しいコーヒーを淹れるべく、水のことについて調べてみました。
そもそも硬水・軟水って何?
水は硬度によって硬水と軟水にわけることができます。硬度とは、1000mlの水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの合計量を数値化したもので、WHO(世界保健機関)の基準によると硬度120mg/L以下を「軟水」、120mg/L以上を「硬水」といいます。ちなみに先ほど日本の水は軟水だと書きましたが、日本でもエリアによって硬度の差はあります。気になる方は、こちらのページを参照してみてください→(全国都道府県別・平均硬度ランキング)
硬度が違うと、水の味って変わるの?
軟水と硬水のミネラルウォーターを飲み比べてみると、軟水は口当たりが軽くて柔らかさを感じ、硬水は噛み応えがあり、慣れないと少し喉に引っかかるような重たさを感じます。硬水に含まれるマグネシウムの量が多いほど、しっかりした飲みごたえを感じるようです。とはいえ、だから硬水が悪いというわけではありません。硬水は飲むと口の中がサッパリしますし、便秘解消や運動後のミネラル補給やダイエットなどにも効果があると言われています。飲み水としては用途に応じて飲み分ければよいと思います。また、調理の仕方にも硬水・軟水で相性があるようなので、気になる方はこちらもどうぞ→(料理と水の相性)
硬度ってどうやって調べるの?
スーパーでミネラルウォーターを買い、ラベルを見ると、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルの含有量が書かれています。一番簡単な計算方法は、以下の通り。
硬度=1000mlあたりのカルシウム含有量×2+1000mlあたりのマグネシウム含有量×4
(※厳密にはもう少し数字が細かいです)
また、こちらのサイトでも数値を入力すると硬度を計算してくれます。ちょうど家に種類の違うミネラルウォーターがあったのでそれぞれ計ってみることにしました。
Volvic(ボルヴィック)
まず最初は、ボルヴィック。日本でも色々なところで売っていますよね。フランスのミネラルウォーターの中でもかなり軟水だと聞いていたので買ってみました。ラベルを見ると、カルシウム:12mg/L、マグネシウム:8mg/Lとあります。先ほどのサイトで計算すると硬度=62.9mg/L、中程度の硬水という分類になりました。
Eau Minérale Naturelle / Sélectionné par MONOPRIX(モノプリブランドのミネラルウォーター)
次は、パリの色々なところにあるスーパーMONOPRIX(モノプリ)のミネラルウォーター。プライベートブランドなので値段も安く、普段はこればかり飲んでいます。こちらもラベルを見ると、カルシウム:44.4mg/L、マグネシウム:1mg/Lとあります。計算すると硬度=115mg/Lで、同じく中程度の硬水という分類になりました。
というわけで、分類上は両方とも中程度の硬水ですがボルヴィックの方がより硬度が低めであることがわかりました。東京の水の硬度が平均60前後なのを考えると、ヨーロッパの水としてはかなり軟水ですよね。ということは、コーヒーにはボルヴィックを使うのが良いのでしょうか…。
コーヒーの味に与える影響について
これが私が一番気になったいたことでした。調べていたところ、UCCのサイトに分かりやすい説明が載っていたのでそのまま引用させていただきます。
「硬水」にはコーヒー成分と反応しやすいカルシウムやマグネシウムといったミネラル分が多く含まれています。カルシウムは苦みを抑えるため、コーヒーを角のないマイルドな口当たりに、一方マグネシウムが多いと、渋みや苦みを感じやすくなります。逆に「軟水」はそういったミネラル分が少ないので、水の個性がコーヒー成分に影響を与えにくくなり、コーヒーそのものの特徴が出やすくなると言えるでしょう。
ちなみに、鉄分は、コーヒー成分中のタンニンと結合して黒褐色にコーヒーの液色を濁らせることがあります。
つまり同じコーヒー豆を使っても、水の硬度や含まれる細かな成分の違いによって、味わいが微妙に変わってくるわけです。コーヒーは嗜好性の高い飲み物だけに、自分好みの味を生み出してくれる水探しを楽しんでみるのもいいかもしれませんね。 (出典:珈琲コラム「コーヒーと水」)
つまり、コーヒーには軟水が合うと言われているのは、軟水の方がコーヒーそのものの特徴が出やすいからで、硬水の中でもミネラル分にマグネシウムが多く含まれているものの方が渋さや苦味が出やすくなってしまうのですね。となると…、さきほど硬度を測った二つの水、硬度の数値自体はボルヴィックの方が低めでしたが、苦味を抑えるカルシウムの含有量はモノプリのミネラルウォーターの方が高く、量が多いと苦味や渋みを感じやすいマグネシウムの含有量もモノプリのミネラルウォーターの方が低いです。もうここから先は完全に好みの話になってしまうのですが、私はどちらかというと、スッキリした酸が感じられて、苦味が少なめなコーヒーが好きなので、ひょっとしたらモノプリの水でコーヒーを淹れたほうが、自分にとっては(←ここ大事)美味しく感じるのかもしれない…と思ってきました。
気になったので、両方の水で淹れてみた
数字だけ見てアレコレ考えてもわからないので、両方の水でコーヒーを淹れてみることにしました。結果ですが、わずかながらにボルヴィックの方が舌の奥の方にやや苦味を多く感じる…ような気がしました。こうやって色々調べたからそう思ってしまっているのかもしれませんが。。でも、それ以外は味にほとんど大差は無く、美味しいと思ったのがモノプリのミネラルウォーターで、かつ値段もこちらの方が安いので、これからコーヒーを淹れるときにわざわざコーヒー用の水を探さなくても良いかな。という感じがしました。
というわけで
硬度だけではなく、ミネラル成分がコーヒーに作用する味の変化、それを自分が好むかどうかというのも水選びのポイントであることがわかりました。コーヒー豆も産地によって特徴があるので、豆によって水を使い分けるのも良いかもしれませんね。以上、硬水の国で初めて考えたコーヒーと水との関係でした。
追記:
後日、ものすごく軟水のミネラルウォーターを見つけました。→(パリの水事情②:パリのスーパーで見つけた、フランスの軟水ミネラルウォーターMont Roucous(モンルークス))
1件の返信
[…] 先日、コーヒーに合う水を探すために、パリで売っているミネラルウォーターを調べていたのですが→(パリの水事情:コーヒーと水の硬度について色々考えてみた)、昨日またMONOPRIX(モノプリ)に行ったらものすごく軟水のミネラルウォーターを見つけました。その名も「Mont Roucous(モンルークー)」。ヨーロッパにもこんな軟水があるんですねー。知りませんでした。 ※発音的には「モンルークー」だと思うのですが、なぜか日本語表記だと「モンルークス」と紹介されているところが多いので、一応それに合わせ「モンルークス」って書いておきます。 […]